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【きのこーず】レポート

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2月26日(火曜日) 巷で大評判の【きのこーず】を中野で目撃した。

【きのこーず】とは唄・鍵盤のゴットネエちゃんこと『エリンギ』と唄・カスタネットの茶目っ気娘の『えのき』そして「僕、いつもしいたげられてるしいたけです」となんとも泣ける自己紹介をしていたネガティブお兄さん『しいたけ』の3人からなるフォークグループだ。

きのこーずの3人による、往年のフォークソングの名曲あり至極のオリジナルソングありとスパイスの効いた選曲。そしてなんともユルい3人のMCタイムにおける心温まるトークは前評判で耳に入っていて心持ち予習はしていたものの実際のきのこーずは予想以上で、初体験の私が言うと熱心なファンの方は心外に感じるかもしれないが、きのこーずの3人の唄と演奏はその日も中野に幸せいっぱいの胞子を飛ばしていた。間違いないと思う。

しいたけによるオリジナルソング【涙枯れても】のギター弾き語りの場面では私の後ろの席からすすり泣く声が聞こえた。ライブ終了後、私は早速彼に話を伺った。彼は中野区で新聞配達やコンビニバイトで生計を立てるA元さんという40代半ばの男性だった。「私、本当に今日きのこーずのライブを見れて幸せでした。実は最近いいことがなくて、本当に死のうと考えていたんです。」A元さんは体を小刻みに震わせながら興奮気味に私に語った。

私は突然の告白に戸惑いはしたものの、そのような状況下にA元さんが「なぜ今日ライブ会場に足を運んだのか?なぜきのこーずなのか?」ともう少々詳細を伺いたく、詳しく感想を聞いてみた。

「たまたま道を歩いていたら、僕の大好きな由紀さおりの『手紙』という曲が聞こえたのでお店に入りました。唄っていたのは由紀さおりではなく、えのきさんだったんですね。すぐに帰るつもりだったんですけど、この『手紙』のえのきさんの唄のトーンがやけに切なかったんです。それで興味をひかれまして、『もう少し、あと一曲だけ聞いたら帰ろう。』と思っていると流暢なMCが始まりまして、その後に しいたけさん『涙枯れても』が始まりました。しいたけさんの唄を聞いているうちにふと過去に立ち上げた事業に失敗してしまった挙句、多額の借金を抱えてしまい、家を逃げるように飛び出した前妻と娘のことを思い出してしまったのです。もう15年も前の話です。しいたけさんの唄は自然とこみ上げるものがありまして。気が付いたら涙が出ていたんです。しいたけさんの後にはエリンギさんが唄う中島みゆきの『化粧』が始まりまして、もう頭の中は前妻と娘のことでいっぱいになってしまいました。気付いたら私はきのこーずの虜になっていて、あっという間にライブは終わっていたんです。今日帰ったら早速15年ぶりに前妻と娘に連絡を取ってみようと思います。特に、前妻とヨリを戻してまた一緒に住みたいという訳では無いんですよ。ただ一言だけ、『お父さん生きてるよ』と、、ただ一言だけ伝えたいのです。」

そう言い残し、店を後にしたA元さんの背中からは迷いは消えていた。A元さんはもっと先の未来を向いて歩くことができるようになったのだろう。A元さんの背中に張り付いていた「罪」という名のレッテルはきのこーずの幸せの胞子と共に空に舞ったのだ。A元さんの希望が叶うことを切に願う

今日もまた『きのこーず』の胞子に翻弄された人間が夜の街へと帰っていく。

(取材/文:ピー譚・セイドリック4世)

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